手作りボードゲームチーム たなごころブログ

手作りボードゲームチーム 「たなごころ」です。

番外編:「“遊びながら学ぶ”地震ゲームを作るデザインワークショップ」に参加しました。

今回もたなごころの活動ではなく番外編です。
先月に引き続き、武者修行に出てきました。

今回はデザインクリエイティブセンター神戸で行われた、
「“遊びながら学ぶ”地震ゲームを作るデザインワークショップ」に参加しました。
10月8日(火)から13日(日)の6日間、
平日は19時-22時の3時間、土日は10時-19時の9時間をかけて
地震の防災をテーマにゲームを作るというワークショップ。
作ったゲームは14日(月・祝)「防災ゲーム大会」というイベントで、
来場した子供達に試遊してもらいます。

6日間で本当に子供が触って楽しく遊べるレベルのものが作れるのか、
個人的にはそんな不安を抱えながらの参加でした。


●講師
講師はタイを代表するゲームデザイナー、
ラッティーゴーン・ウッティーゴーンさん。
世界中のすべての子供達は質の高いおもちゃに触れるべきだ
という信念を持っておられ、
おもちゃやドールハウスの開発や
タイだけでなく海外の様々な国で様々なパートナーと
環境問題や社会、政治問題の解決を目指す教育ゲームの開発を行っておられます。
先生との会話は英語です。連日通訳の方がついて下さいました。
基本聞き取れるのですが、こちらから言いたい事が言えない、
本当はもっとお話ししたい、という状況に悩む日々となりました。


●参加者
参加者は15名ほど、4つの班に分かれて
3〜4名で1つのゲームを作ります。
お話を聞くと「防災」「社会活動」「ゲームデザイン」など
それぞれ別のキーワードで集まっているように感じました。
中には東日本大震災の際早い段階で現地に入られ
長期にわたりボランティアをされ、
現在も復興支援に関わっておられるような方もいらっしゃいます。


以下7日間のゲーム制作記録です。
長文となっておりますので、興味のある方は
よろしければご覧下さいませ。


●1日目(火曜)〜いろいろなゲームで遊ぶ
初日はまず、ラッティコーンさんが用意された
4つのゲームを遊びました。
遊んだゲームは以下の4つ。
 ・Recycling Memo Game 
 ・ECO Go Game 
 ・おばけキャッチ 
 ・Story Cubes
上2つはラッティコーンさんの作られたゲームです。

この4つを遊んだ後、各自が持ってきた
自分の好きなゲームを班の中で紹介します。

こうしていくつかのゲームを体験した後、
ラッティコーンさんからのレクチャーがありました。
・ゲームとは何か
・ゲームの種類
・競争の種類
・体を動かして遊ぶゲームの種類
・ゲームを遊ぶ場面

これらの話を聞いた後、先ほど遊んだゲームが
どのような分類になるのかを振り返るグループワークをします。
例えば、「Recycling Memo Game」はcompetitive(競争)なゲームで
memory(記憶力)を使うゲームでしたね、という具合です。

こうして様々なゲームを体験して、
ゲームにはどのような種類のものがあるのかを考えて
1日目は終了しました。

そして2日目に向けて、宿題が出ました。
地震に関連する仕事、人物、場所などのキーワードを複数あげる
・その中から1つキーワードを選んで、それをもとに物語を考える

まずはゲームのstory(物語)を組み立てるようです。
それによってゲームの目標や、ゲームのデザインが決まってくるとの事でした。



●2日目(水曜)〜storyを考える
この日から、ゲーム制作の班分けとなりました。
私の入った1班は3名のチームです。

この日はまずラッティコーンさんから、
「なぜstory(物語)が重要なのか」というレクチャーがありました。
それは人の心に訴えかけ、ゲームの方向性とゴールを
明確にするというお話でした。

レクチャーの後は各班で、各自考えてきたstoryを話します。
班のメンバー同士は初顔合わせ状態だったので
その時はそれぞれの背景がいまいち理解しきれていなかったのですが、
振り返ると個々の問題意識がそれぞれのstoryに
盛り込まれていたのだなあと思います。
「防災」や「地震のメカニズム」というものを普段あまり意識をした事のない私では
出てこないような物語でした。

三者三様のstoryの中で、ひとつ共通して表現したいこととして
地震の備えはモノの備えだけでなく、
人とのつながりも大切だということがありました。

そこから1班のstoryとして、
プレーヤーはとある地震のよく起きる村の村人となり、
1、普段から地震に備えて道具を集め、人とのつながりを作り、
  知識やスキルなどを蓄えて備える
2、地震が起きたらそれまでの備えで地震にともなうトラブルに立ち向かう
3、村人全員で生き残ることをめざす
という物語を作りました。

プレーヤーは様々な特性を持つ村人から、
自分がどれをやるか選べるという想定でした。

その後各班のstoryを発表して、2日目は終了しました。
宿題として、各班考えたstoryを
先日のレクチャーであったゲームタイプ別に考えると、
どのようなゲームが考えられるかを
各自でアイデア出しをしてくるようにという事が言われました。

競争ゲームか、協力ゲームか、その両方を持つゲームか。
そして競争の種類として、
戦略、運動能力、時間、頭脳の4種類の側面から
それぞれについてできるゲームの仕組みや表現を
ゲームのメカニクスを決める前の段階で
できるだけ出してみるというものでした。

これは個人的にはとてもおもしろい体験でした。
例えばこのゲームをバランスゲームにするとしたら?
など、当初描いていたものを一旦おいて、
様々な表現を考えてみるのは可能性の広がりを感じました。



●3日目(木曜)〜最初のプロト作成
この日はまずラッティコーンさんから、
ゲームのGOALを明確にするようにという話がありました。
ゲームを通じて伝えたい事は何か、
学びのポイントを明確にするようにということでした。
そして通常たくさんの事を盛り込みたくなりますが、
多くても3つ、そしてそれは1つメインのテーマがあり、
サブとしてもう2つくらいあるというのが限度だということでした。
学びを入れすぎると子供が身構えてしまう、
入れても10-20%までだと、主催の方からの補足もありました。

私たちの班の学びのポイント、
メインテーマは「備えの大切さ」を知る事
そしてサブテーマは備えには日頃からの「人とのつながり」もある
ということでした。

それを確認した上で、ゲームの構造を考えます。
大きくは
・備えを集めるフェーズ
・備えを使ってトラブルを解決するフェーズ
2つがあります。
今回イベントに来る子供達が小学校低学年から中学年ということで、
あまり難しい構造にはしない方がよさそうです。

話をするうちにいろいろなアイデアは出るのですが、
まずは基本の一番シンプルな構造を作ってみよう
ということになりました。

そこで最初のプロトとしてこんな形を考えました。
〜〜
備えを集めるフェーズは馴染みのあるすごろく形式で
止まったマスのカード(もの、スキル、イベント)を
獲得することで備えを集める。

そしてそれぞれカードの中に「地震カード」を混ぜておき、
地震カード」が出ると災害フェーズに移行する。

災害フェーズでは手番にトラブルカードを引き、
それまでの手に入れたカードでどのように解決するか話をする。
他のプレーヤーを納得させる事ができたら青いキューブを1つもらえる。
解決できなければ赤いキューブをもらう。
そうしてはじめに3つ青いキューブを手に入れたプレーヤーの勝ち。
〜〜

白い紙でラフのカードとボードを作り、
サンプルに持ってきていたゲームのコマとキューブを使い
テストプレイをしてみます。

すごろくは淡々と進みいろいろなカードが手に増えていき、
突然地震のカードが現れます。
その後様々なトラブルを、自分の限られた手札で
なんとか解決できないか、へ理屈も込みで、
ああだこうだと考えて話すのは
意外とおもしろいものでした。

トラブルの状況は、セミナーのはじめに主催から資料として配られた、
地震イツモノート」(地震イツモプロジェクト編 ポプラ文庫 2007)から、
阪神・淡路大震災の際に実際に起きたトラブルをカードにしました。
これで、実際にどんな事が起きたかを知る事ができる、
そして自分がその立場になった時どうするかを考えてみる、
これは1つの学びになりそうです。

ちょっとおもしろいゲームができそうだ、という手応えを感じつつ、
一方で、プレイヤー間のやり取りがほぼない点や、
子供がどこまで状況を想定して解決策を考えられるのかなど、
課題は少なくはないと感じました。

一旦超ラフのプロトができたので、もう少しカードの内容を吟味して、
ゲームを形にしていくという方針となりました。



●4日目(金曜)〜進め方で揉める
はじめに各班で今どんなゲームを考えているか、
簡単にプレゼンをして他の班や先生から意見をもらいます。
各班当初のstoryから、それぞれの形のゲームが
出来上がりつつあるようでした。

プレゼンが終わったところで、
今後の進め方について班の中で議論になりました。
最初真意がわからなかったので、はっきり言ってほしい、
とお願いしたところ、思われている事をはっきりと言って下さいました。
個人的にはお思うところもありショックも大きかったのですが、
私に1つ非があるという事は理解でき、
またその方が私を信頼してはっきり言って下さったというのもわかったので、
5分だけ何もしない時間をもらって気持ちを切り替えました。

時間的にかなりハードなワークショップでしたので、
なあなあで進めきれないところがありました。
ほぼ1日の時間をロスしてしまいましたが、
はっきりと思う事を言えるメンバーと一緒の班になれた事は
幸運だったとしか言いようがありません。

その後その日ラッティコーンさんからもらった意見を共有しました。
・他のプレーヤーとのやりとりがない
・カードの中に集めると、他のプレーヤーが助けてくれるカードを入れる
 (例:フレンドカード)
・トラブルカードの中にも他のプレーヤーとのやり取りをするものを入れる
 (例:優しいともだち、カードを2枚くれる、他のプレーヤーから強制的にもらえるなど)
・すごろくが淡々としておもしろくない
 exiteできず、motivationを維持できない、surpriseに欠ける
   ・地震発生をすごろくに入れる
    (例:3マスくらい地震マスが続くゾーンがあるなど)
   ・すごろくマスに、プレーヤー同士のやり取りを入れる
    (例:カードをあげる、もらう、交換など)
・円形のすごろくだが、子供としてはスタートとゴールがある方がわかりやすい

そこから話し合い、
・すごろくのマスに「地震マス」とカードの交換等の「アクションマス」を入れる
・備えのカードの1種類を「ともだちカード」として、
 このカードには何かしらの特技を持っている人物を描く。
 このカードは災害トラブルの時に特技で自分を助けてくれるが、
 他のプレーヤーを助けることにも使う事ができるようにする
・すごろくにスタートマスを作る
という事を決め、「ともだちカード」に描く人物について、
各自アイデアを出してくる事でこの日は終了しました。



●5日目(土曜)〜ゲームがおもしろくなくなる
この日と翌日は10-19時で集中的に制作をします。
翌日班のメンバーが一人欠席という予定もあり、
この日でゲームとして成立するものを作る事が
私たちの班の目標です。

この日から2日間、慶應義塾大学商学部教授の吉川肇子先生も
アドバイザーとして来て下さいました。
まずラティッコーンさんと吉川先生が各班を回り、
各班のゲームの状況を見て下さいます。

昨日の最後の状態のゲームを説明したところいくつかの指摘を受けました。

・時間の問題
・所要時間10-20分としているがそれに収まっていない
・学びの面で見ると、長くすれば情報を勉強する形に
 短くすると繰り返しやりたくなるものにする事で、
 何度もやって上達していくことで勉強する形になる
・複雑すぎる
・フェーズ、カード、コンポーネントと要素が多すぎる
・トラブル解決の判定が難しい
・すごろくはスタートとゴールがあったほうがいい
・何に特徴をもたせたいか
・ダイアログなのか、道具を勉強させたいのか、など

これらを踏まえて昨日の方針に加え
・2つのフェーズにしていたものを1つにすべく
 すごろくの中に地震マスを配置する
 そのマスに止まり1〜3が出れば地震発生とする
・すごろくにゴールをもうけ、
 トラブル解決ができた際に獲得する星が3つ集まれば
 ゴール前の扉を通れる

という方針に切り替え、ボード制作とカード制作にわかれ
動かせる形のものを作るべくプロト第2弾を作成しました。

一旦15時にもう一度先生に見て頂けるとの事だったので、
カードについてはイラスト無しのテキストだけのものを作成します。
カードは裏表を並べて作って印刷して、
折ってはり合わせてカードにする簡易版です。

結局プロト第2弾の完成は16時頃。
そこでテストプレイをしたところ、
未解決の問題に加え更なる問題が発生。
地震がなかなか起きない
・ゴールにぴったり上がれない
・競争と協力のバランスが取れていない
・判定でNOが出しにくい
・星がそろえばただのすごろくになってしまう

行き詰まってしまった中で
先生からいくつかのアイデアをももらいました。
地震をすごろくのマスにせずサイコロの1つの目にする
・最初から手持ちのカードを作る
・問題解決の判定が難しいのであれば、
 このトラブルにはこのカードが必要というように
 すべて対応づける
・すごろくを一方通行にする など

連日の疲れもあり、この辺りから頭脳労働が若干つらくなっており、
行き詰まった中で、班の中で自分たちがどんなゲームを作りたいのかを
少し見失ってきていました。
よい解決策を見いだせないので、先生からのアドバイスにあった、
トラブルとカードの1対1対応というのを作ってみました。
すごろくの形も修正を入れ、
地震もサイコロで起きるように変えてみました。

そしてプロト第3弾ができました。
テストプレイをしたところ、
ゲームとしては回らない事もないのですが、
なんと、全くおもしろくなくなってしまいました。

私たちは4日間もかけて、つまらないゲームを作ってしまったのです。
この衝撃と敗北感。
この時点で18時。あと1時間。

そこでいくつか出た問題点は整理したものの、
完全に頭がオーバーフローとなっていて新しいアイデアが出ません。
残りの時間でボードやカードのデザインを整えて、
その日は一旦、ゲームから離れて頭をすっきりさせる事にしました。

後1日で、ゲームのシステムを整えて、
実際に子供の手で触れるモノを作らなければいけません。
これはなかなか重たい状況です。
あまりにしんどくなったため、
運営の方に窮状を聞いて頂き(泣き言を聞いて頂き)
家に帰りました。

でもこれは恐らく、ゲームを作る上で一番醍醐味となる部分です。

家に帰って夕食を作り、頭を少しゲームから離した後、
家族を相手に何度かテストプレイをしてみます。

最初におもしろいと感じたのは一体なんだったかを振り返り、
限られた手札の中からトラブル解決の物語を
自分で考えて話をすることだったことを思い出しました。

その中で1つ、改善案が出ました。
使うカードはそのままで、カードの使い方を変える案です。
他にも、地震の発生率をコントロールするために、
途中でサイコロを替えるなども考えました。

ゲームをこうコントロールしたい、
こういう状況をゲームの中で表現したい、というのがあっても
それに適した方法を思いつかないという状況がおきました。
自分の経験値の足りなさを痛感しました。
おもしろい、とは一体何なのか。
また世界観を持たせながらゲームとしてどうまとめていけばよいのか
ゲーム全体を見ながら部分部分を考える事も
できていないように感じます。

深夜ゲームの流れを考えながら、
これが5歳、小学1年生と遊ぶならどうなるか、
という事を1人シミュレーションしました。

後で聞いたところでは、この時点で
ゲームのシステムがまだ確定していなかったのは、
うちの班だけだったそうです。



●6日目〜いろんな方に助けてもらって作る
制作最終日。
班のメンバーは1名欠席、
もう1名も途中までの参加となる事が決まっています。

運営の方の計らいで
運営組織の方で今日東京から来られた方が1名
助っ人で入って頂ける事になりました。

はじめにその日の予定が提示されました。
15時までにゲームを作り、
15時から明日のイベント会場の下見に行き、
戻ってきたら18時までに、
ゲームの説明のポスターを作るという予定です。
まだシステムが確定していないゲームを
5時間でコンポーネントまで作りあげ、その上ポスターまで書く。
朝の時点で心が折れかけました。
が、やるしかないようです。

まずは昨晩考えてきたアイデア
ラッティコーンさんに見てもらいながら
テストプレイしてみます。

この時点でまだ問題はいくつかありました。
しかしラッティコーンさんから、
昨日よりはよくなっているからこのままいくように、
そしてカードの内容については
運営組織の方で「地震イツモノート」の企画をされた方に入って頂いて、
子供達にわかりやすい内容になるように調整をするように
というアドバイスを頂きました。

そこから防災の専門家でもある運営の方に入って頂き、
カード内容の調整を行いました。
今あるカードの内容を見て頂き、取捨選択、修正をして、
数が足りない分は新たにアイデアを頂いて、
トラブルのカードと道具や特技のカードとのバランスを取っていきました。
後で思うと、このカードの内容、バランス調整は
このゲームの肝の1つでした。
ここで防災の専門家の方に入って頂けたのは、
本当にありがたい事でした。

トラブルのカードについてはトラブルの状況を示し、
その解決のためのヒントを挿入することで、
プレーヤーが解決策を考える手がかりとする事にしました。

そうしてカードの構成が決まったのが12時頃、
そこから決まった内容の整理とカードのデザインが始まります。
しかし残念ながらカードの絵柄をひとつひとつ
書いていく時間はありません。
プロトの段階でカードの基本枠のデザインは暫定であったので、
何かしらのイラストを1つ入れればよいカードについては、
今日入って頂いた運営組織の方と、
防災の専門家の方に手分けをしてもらって、
フリーの画像を探して入れてもらう事になりました。
こうなってくると突貫工事の様相です。

トラブルを示すカードについては先ほど調整した情報を整理して、
状況をイラストで示さなければならず、
フリーの画像を持ってくるのはむずかしい状況でした。
これについてはラッティコーンさんのアシスタントの方に、
事前に何枚か書いて頂いていたのでそれをもとに絵を描いていきます。
これについては私の分担となりました。

慣れないドラクエフォントというものをつかってしまったことで
使用できる文字に制限があったり、
作業をするメンバーのillustratorのバージョンが違ったりと
細々としたトラブルに見舞われながらも、
カードはちょうど適したフリーイラストのサイトを見つけて頂き、
基本的にはそこのイラストでそろえてもらう事ができました。
私の顔は悲壮感が漂っていたようで、
「顔が疲れてますよ」などといわれながら、
半泣きで作業を続けました。

デザインが確定したカードは、
切って台紙を挟んで貼ってカード状にしていく作業があります。
ボードは昨日ほぼ完成していたので
今日の朝変更があった所を修正して、
印刷してハリパネに貼ります。
実作業がやや追いついていませんでした。

そうこうしているうちに15時となり、
カードのデザイン半ばで現場の下見にいく事になりました。
会場では、その日も防災関連のイベントが行われており、
小学生くらいの子供達が走り回って遊んでいました。

あぁ、こういう子供達に向けて今ゲームを作っているのか。
自分が今何をやっているのか、少し思い出す事ができました。

そして戻ってきたのは16時頃、
そこからポスターを書かなければなりません。
助っ人に入って頂いた方とアウトラインをざっと相談しました。
しかし、私は絵を描く事が苦手です。
一体、私に何が書けるのか…。
書く事は決めていながらも、
白いポスターの前でしばらく灰になりました。

しかし灰になってみたところで、これは私たちのゲームなので、
他の誰かが書いてくれるものではありません。
絵は自分ではかけないので、
カードで使ったイラストを印刷して貼る事にして、
題字は切り絵にする事にしました。
助っ人で入って下さった方が、パーツを印刷してくださったり、
ダンボールと色紙で可愛らしい王冠を作って下さりました。
そこからはもう必死のパッチです。

ポスターに鉛筆で軽く下書きをして
ポスターカラーでガンガン書いていきます。
時間まであと30分。
ポスターを仕上げてさらにゲームの仕上げも
しなければなりません。
ばたばたし始めた私を心配して、
吉川先生や通訳の方、事務局の方がポスターを手伝って下さいました。
本来こんな作業をして頂くような方々ではないので、
申し訳なさを感じつつも背に腹は変えられず、
お言葉に甘えて色紙の切り貼りや、パーツの文字入れをお願いしました。
振り返るとゲームの調整をしてもらった防災の専門家の方と
ラッティコーンさんまでもが、うちの班のカードを切って
台紙と貼りあわせる作業をして頂いています。
後で聞くとそれ以外にも私の知らないところで
手伝って下さった方もいたようでした。

それはもう申し訳なさとありがたさで身悶えしてしまうような光景でした。
結局うちの班のゲームとポスターはたくさんの方々に支えられ、
なんとか完成をする事ができました。

その日は終わり30分で、各班どんなゲームになったかをプレゼンをして、
ワークショップとしては終了となりました。

しかし本番は明日です。
子供達にちゃんと遊んでもらえるのか。
まだ少し心配でしたが、ゲームが完成したこの夜は
子供にどう説明するかのイメージが
なんとかつくようになっていました。



●最終日〜お披露目
ゲームお披露目当日。
結果からいうと13時から16時の3時間、
ブースにはほぼひっきりなしに人が来て頂き
小学1年生から中3までのお子さんたちと、
保護者の方や他のブースなどのスタッフの方、
11組、約20名の多くの方に遊んで頂く事ができました。

最初のゲームでは小学1年生の女の子が
途中で集中力が切れてしまったようでしたので、
少しルールを調整して時間を短縮しました。
それ以降はゲームの最後まで楽しく遊んでもらえたようでした。

一番うれしかったのは小学3年生の女の子が、
1度遊んで他のゲームも遊んだ後に、
もう一度遊びたい、と戻ってきてくれた事でした。
これはここまでの苦労がすべて吹き飛ぶ思いでした。

ゲームの中では地震にまつわるトラブル解決を、
自分の手札で考えて話をしなければならないのですが、
子供達の考える事は、こちらの想定を超えとても柔軟で、
また悩む時も、ヒントを出しつつ考えてみることを促す事で
自分自身で考えて話をしてくれました。
ゲームをしながら地震の防災について
少しだけ考えてもらえたのではないかと思います。


●どんなゲームになったのか
「イツモ村」
時間:15〜20分
人数:3〜4人
年齢:5歳以上
〜〜〜〜
プレーヤーは地震がよく起きる「イツモ村」の住人です。
プレーヤーはすごろくになっている「イツモ村」を回りながら
地震防災に役立つ「どうぐ」を集めたり、
村人と「ともだち」になったり、
村人と仲良くなり隠された「とくぎ」を知ったりして地震に備えます。
「イツモ村」の奥には扉があり、
この扉は「そなえマスター」でないと通る事ができません。

すごろくが3巡目になると、サイコロの1と6の目は
地震発生」の目となります。
地震が発生するとトラブルカードをめくり、
地震に伴うトラブルを解決しなければなりません。
それまでに蓄えた「どうぐ」、
「ともだち」になった村人やその「とくぎ」を使って
トラブルの解決方法を考えて他のプレーヤーに話します。
正解はありません。
話をする事ができれば「そなえの星」を2つもらう事ができます。

1人では解決ができない時は、
他のプレーヤーに助けを求める事もできます。
他のプレーヤーがトラブル解決のためにカードを出してくれれば、
そのカードでどう解決するかを一緒に考えて話しましょう。
そうすればあなたと助けてくれたプレーヤーは
「そなえの星」を1つずつ得る事ができます。

もしトラブルを解決できなければ、あなたは「そなえの星」を
1つ失います。

星が2つそろえばあなたは「そなえマスター」です。
村の奥の扉を開けて、ゴールをめざしましょう。
最初にゴールにたどり着いた人の勝利です。

〜〜〜

最終日にやって頂いたカード調整のおかげで
なんとかぎりぎりゲームとして成立していますが、
まだいくつか問題を抱えています。
落ち着いたらもう少しリニューアルを考えてみたいと思います。


●1週間を終えて
1週間という短いではありましたが、
とても密度の濃い体験をさせて頂きました。

ゲームを作っていく上で自分に足りないものを
あれもこれもと見せつけられたような1週間でした。
ゲームで表現をする時もっと多くの引き出しが欲しい。
それにはもっと多くのゲームを知る必要がありそうです。
もっと体系的に勉強してみるのもおもしろそうです。
テーマのあるゲームを作る時のリサーチの重要性、
自分が何を作りたいのか、おもしろさとは何なのか見失わない強さ、
他の人とモノを作ることのおもしろさやスタンス共有の大切さ、
とにかくひとつ作り上げてみると見えてくる事もある事などなど。

かなり重たいワークショップで、途中何度か心が折れかけましたが
結果的には得るものもとても大きかったです。

またアナログゲームが娯楽以外で
教育、地域社会、企業組織、国家レベルの啓発、
様々な場面でその力が注目されている事を感じました。
遊びながら、意識をせずに自然に学ぶ事ができる。
それはドイツのボードゲームで遊び始めた頃に
感動したポイントの1つでした。
今後、様々な分野からボードゲームの輪が
広がっていく可能性も感じました。

講師のラッティコーン・ウッティコーンさん、
アシスタントの方、吉川先生、通訳の皆さん、
主催のデザインクリエイティブセンター神戸(Kiito)の皆様、
そして班のメンバーの皆様、
本当にありがとうございました。

ラッティコーンさん、アシスタントの方、班のメンバーと